保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題
『週刊東洋経済』4月10日(月)発売号では「保険動乱」として、契約者に加えて保険会社の営業職員が引き起こす不正行為とその舞台裏について特集されているのですが、「未然防止や再発防止のための取り組みが形式的・表面的なものにとどまらず、営業現場の隅々にまで浸透するよう、実効性のある管理態勢を整備・確立していくことが課題となっている」おり、これは金融庁が昨秋に公表した「保険モニタリングレポート」で生命保険業界が抱える課題として記した一節で、大手生保を中心に営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発する中で業界を挙げて取り組みを徹底するよう圧力をかける意味合いがあったようです。
保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題
( 東洋経済 ONLINE 2023/04/10 5:10: 東洋経済 記者中村 正毅 )
「未然防止や再発防止のための取り組みが形式的・表面的なものにとどまらず、営業現場の隅々にまで浸透するよう、実効性のある管理態勢を整備・確立していくことが課題となっている」
これは金融庁が昨秋に公表した「保険モニタリングレポート」で、生命保険業界が抱える課題として記した一節だ。
大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発する中で、業界を挙げて取り組みを徹底するよう圧力をかける意味合いがあった。
『週刊東洋経済』4月10日(月)発売号では「保険動乱」として、契約者に加えて保険会社の営業職員が引き起こす不正行為とその舞台裏について特集している。
同レポートの公表と時を同じくして、業界団体の生命保険協会(生保協)は、営業職員の管理態勢をめぐる新たな指針の策定に着手。
協会長の稲垣精二氏(第一生命会長)が旗振り役となり、営業職員チャネルを持つ20社のトップと意見交換するなど、急ピッチで策定作業を進めることになった。
生保協が新たな指針を策定
「ガイドライン(指針)として、業界に一律での自主規制を求めるのは筋が違うのではないか」
複数の生保からそうした反発の声が出る状況で、複雑に絡み合った利害関係のひもをほどくのは、簡単ではなかった。
当初は2022年中に指針を取りまとめるとしていたが、実際にこぎ着けたのは今年2月になってからだ。
そのタイトルは「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」。
「指針」の文字が抜け落ち「着眼点」となっているあたりに、一部生保の後ろ向きな姿勢がにじみ出ている。
ただし、その中身はというと、各社が管理態勢の強化に向けて取り組む際の原理・原則を、大きく15項目に分けて詳細に記しており、後々に言い訳できる逃げ場をなくそうとしていることが伝わってくる内容だ。
協会長会社として、管理指針取りまとめに奔走した第一生命の苦労がしのばれるが、そもそも新たな指針が必要な状況をつくったのは、第一生命でもある。
今から2年半前の20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表した。
元職員は、特別調査役という第一生命で唯一与えられた肩書を利用し、「特別調査役に特別な特権・権限が与えられた。私にお金を預けたほうがよい」などと言って、顧客などに架空の投資話を持ちかけては金銭をだまし取っていた。
全国で約4万人いる営業職員の中で、優秀成績職員として第一生命の新聞広告にもたびたび登場していただけに、一営業職員の不祥事では済まされず、稲垣氏は当時社長として謝罪会見に追い込まれている。
金銭詐取事案が頻発
その後、事態を重くみた金融庁は生保協を通じて、営業職員の管理に関する実態調査に踏み切ることになった。
21年4月に公表した実態調査では、19億円の金銭詐取事件を「特異な事例」としたうえで、当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。
ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。
「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった。
さらに金融庁と生保協は、22年1月にかけて2度目の実態調査に踏み切り、それが新たな管理指針を策定する契機になった。
指針を公表した直後の今年3月には、日本生命の長崎支社の元営業職員が、架空の保険商品を提案するなどして、約1530万円をだまし取る事案が発覚している。
不祥事が連鎖する事態を現場の営業職員はどうみているのか。
「伝説の営業職員」と呼ばれた柴田和子氏が名誉会長を務め、生保の営業職員を中心に約4万人の会員を抱えるJAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、「営業職員は、お客様一人ひとりに真摯に向き合い『安心』と『満足』を提供する顧客本位の活動が重要であると考えている。そのため、一部の営業職員による不祥事案が起こってしまったことはとても残念であり、今後、不祥事がなくなることを望んでいる」と文書で回答した。
生保協が策定した管理指針については、「内容に対する評価をする立場にはないが、当協会としても連携できることは連携していきたい」としている。
大量離職が招く悪弊
生保協調べの営業職員数は全国で24万人。そのうち6割強に当たる15万人は国内大手4社の営業職員が占めている。
「これだけの数がいれば、年間数件の不祥事に対して、いちいち目くじらを立てるのもどうなのか」という声が業界関係者から時折聞こえてくる。
だが、生保は免許制の金融機関だ。法令順守に対する体制や意識が、その程度で本当によいのだろうか。
そもそも、不祥事が頻発する構造的な要因に対して、生保各社がどれだけ正面から向き合い、解消しようとしているのか。
構造的な要因とは、営業職員の大量採用・大量退職、いわゆる「ターンオーバー問題」だ。
入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。
いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまうという状態だ。
コンプライアンス研修で意識を徹底させようにも、短いスパンで顔ぶれが大幅に変わってしまってはどうしても実効性が乏しくなる。
さらに、ターンオーバー問題は別の問題も引き起こす。
それは優秀成績職員への依存と忖度(そんたく)だ。
支社ごとに契約獲得数などの営業目標を課すケースが多い状況で、新人が定着しないのであれば、おのずと優績職員に頼らざるをえない。
そうなると、優績職員の立場が強くなり、部長や支社長でも口を挟めなくなる。
何か注意でもしようものなら、「役員の携帯に直接電話して不満をぶちまけるといったことは、この業界ではよくある話」(大手生保幹部)。そうしたことが、優績職員が日中どこで何をしているのか、誰もわからないという状況を招くわけだ。
第一生命の19億円事件をはじめとして、生保各社の金銭詐取事案は、そうした優績者に対する管理・監督不足に起因している場合が多い。
第一生命では、長年にわたって染み付いてしまった悪弊を改善しようと、特別調査役などの肩書を見直した。
採用についても人材の質を高めるために、ピーク時の半分以下に新規採用数を絞り込むといった取り組みを進めている。
業界内では、営業職員チャネルの改革が最も進んでいるのは第一生命という声が多い。
だが実は、その裏側で、経営陣主導による必死の取り組みに冷や水を浴びせるような事案が発生していたことはほとんど知られていない。
損失を自腹で補塡
同事案が発覚したのは、21年秋のこと。当時、高齢の優績職員が付き合いの深い顧客に、投資話を持ちかけていたことがわかったのだ。
預かった金銭をだまし取ったり、投資仲介で手数料を得たりしていたわけでは決してない。
ただ、投資先が筋悪の業者とは知らずに紹介したことで顧客が損失を抱えてしまい、優績職員はそれに焦ったのか「損失を自腹で補塡していた」(第一生命元役員)という。
これは保険業法に照らして、直ちに違反になるような行為ではない。
しかし、第一生命が優績職員の営業適正化を進める中で、あってはならないグレーな行為だった。
第一生命社内でも一定の影響力を持つ優績職員だっただけに、同事案を知った役員たちの衝撃はそうとう大きかったようだ。
同事案について、第一生命は「営業職員を守りたいので、個人が特定できるような形で記事にしないでもらいたい」としているが、はたして今後どこまで隠し通せるだろうか。
この事案がきっかけかは定かでないが、金融庁は今、明治安田生命への立ち入り検査で、副業や投資勧誘行為の有無について、営業職員へヒアリングを進めている。
もし同様の事例が多数見つかるようなことがあれば、金融庁の逆鱗(げきりん)に触れ、さらなる処分や規制強化があるかもしれない。

保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題
( 東洋経済 ONLINE 2023/04/10 5:10: 東洋経済 記者中村 正毅 )
「未然防止や再発防止のための取り組みが形式的・表面的なものにとどまらず、営業現場の隅々にまで浸透するよう、実効性のある管理態勢を整備・確立していくことが課題となっている」
これは金融庁が昨秋に公表した「保険モニタリングレポート」で、生命保険業界が抱える課題として記した一節だ。
大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発する中で、業界を挙げて取り組みを徹底するよう圧力をかける意味合いがあった。
『週刊東洋経済』4月10日(月)発売号では「保険動乱」として、契約者に加えて保険会社の営業職員が引き起こす不正行為とその舞台裏について特集している。
同レポートの公表と時を同じくして、業界団体の生命保険協会(生保協)は、営業職員の管理態勢をめぐる新たな指針の策定に着手。
協会長の稲垣精二氏(第一生命会長)が旗振り役となり、営業職員チャネルを持つ20社のトップと意見交換するなど、急ピッチで策定作業を進めることになった。
生保協が新たな指針を策定
「ガイドライン(指針)として、業界に一律での自主規制を求めるのは筋が違うのではないか」
複数の生保からそうした反発の声が出る状況で、複雑に絡み合った利害関係のひもをほどくのは、簡単ではなかった。
当初は2022年中に指針を取りまとめるとしていたが、実際にこぎ着けたのは今年2月になってからだ。
そのタイトルは「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」。
「指針」の文字が抜け落ち「着眼点」となっているあたりに、一部生保の後ろ向きな姿勢がにじみ出ている。
ただし、その中身はというと、各社が管理態勢の強化に向けて取り組む際の原理・原則を、大きく15項目に分けて詳細に記しており、後々に言い訳できる逃げ場をなくそうとしていることが伝わってくる内容だ。
協会長会社として、管理指針取りまとめに奔走した第一生命の苦労がしのばれるが、そもそも新たな指針が必要な状況をつくったのは、第一生命でもある。
今から2年半前の20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表した。
元職員は、特別調査役という第一生命で唯一与えられた肩書を利用し、「特別調査役に特別な特権・権限が与えられた。私にお金を預けたほうがよい」などと言って、顧客などに架空の投資話を持ちかけては金銭をだまし取っていた。
全国で約4万人いる営業職員の中で、優秀成績職員として第一生命の新聞広告にもたびたび登場していただけに、一営業職員の不祥事では済まされず、稲垣氏は当時社長として謝罪会見に追い込まれている。
金銭詐取事案が頻発
その後、事態を重くみた金融庁は生保協を通じて、営業職員の管理に関する実態調査に踏み切ることになった。
21年4月に公表した実態調査では、19億円の金銭詐取事件を「特異な事例」としたうえで、当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。
ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。
「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった。
さらに金融庁と生保協は、22年1月にかけて2度目の実態調査に踏み切り、それが新たな管理指針を策定する契機になった。
指針を公表した直後の今年3月には、日本生命の長崎支社の元営業職員が、架空の保険商品を提案するなどして、約1530万円をだまし取る事案が発覚している。
不祥事が連鎖する事態を現場の営業職員はどうみているのか。
「伝説の営業職員」と呼ばれた柴田和子氏が名誉会長を務め、生保の営業職員を中心に約4万人の会員を抱えるJAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、「営業職員は、お客様一人ひとりに真摯に向き合い『安心』と『満足』を提供する顧客本位の活動が重要であると考えている。そのため、一部の営業職員による不祥事案が起こってしまったことはとても残念であり、今後、不祥事がなくなることを望んでいる」と文書で回答した。
生保協が策定した管理指針については、「内容に対する評価をする立場にはないが、当協会としても連携できることは連携していきたい」としている。
大量離職が招く悪弊
生保協調べの営業職員数は全国で24万人。そのうち6割強に当たる15万人は国内大手4社の営業職員が占めている。
「これだけの数がいれば、年間数件の不祥事に対して、いちいち目くじらを立てるのもどうなのか」という声が業界関係者から時折聞こえてくる。
だが、生保は免許制の金融機関だ。法令順守に対する体制や意識が、その程度で本当によいのだろうか。
そもそも、不祥事が頻発する構造的な要因に対して、生保各社がどれだけ正面から向き合い、解消しようとしているのか。
構造的な要因とは、営業職員の大量採用・大量退職、いわゆる「ターンオーバー問題」だ。
入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。
いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまうという状態だ。
コンプライアンス研修で意識を徹底させようにも、短いスパンで顔ぶれが大幅に変わってしまってはどうしても実効性が乏しくなる。
さらに、ターンオーバー問題は別の問題も引き起こす。
それは優秀成績職員への依存と忖度(そんたく)だ。
支社ごとに契約獲得数などの営業目標を課すケースが多い状況で、新人が定着しないのであれば、おのずと優績職員に頼らざるをえない。
そうなると、優績職員の立場が強くなり、部長や支社長でも口を挟めなくなる。
何か注意でもしようものなら、「役員の携帯に直接電話して不満をぶちまけるといったことは、この業界ではよくある話」(大手生保幹部)。そうしたことが、優績職員が日中どこで何をしているのか、誰もわからないという状況を招くわけだ。
第一生命の19億円事件をはじめとして、生保各社の金銭詐取事案は、そうした優績者に対する管理・監督不足に起因している場合が多い。
第一生命では、長年にわたって染み付いてしまった悪弊を改善しようと、特別調査役などの肩書を見直した。
採用についても人材の質を高めるために、ピーク時の半分以下に新規採用数を絞り込むといった取り組みを進めている。
業界内では、営業職員チャネルの改革が最も進んでいるのは第一生命という声が多い。
だが実は、その裏側で、経営陣主導による必死の取り組みに冷や水を浴びせるような事案が発生していたことはほとんど知られていない。
損失を自腹で補塡
同事案が発覚したのは、21年秋のこと。当時、高齢の優績職員が付き合いの深い顧客に、投資話を持ちかけていたことがわかったのだ。
預かった金銭をだまし取ったり、投資仲介で手数料を得たりしていたわけでは決してない。
ただ、投資先が筋悪の業者とは知らずに紹介したことで顧客が損失を抱えてしまい、優績職員はそれに焦ったのか「損失を自腹で補塡していた」(第一生命元役員)という。
これは保険業法に照らして、直ちに違反になるような行為ではない。
しかし、第一生命が優績職員の営業適正化を進める中で、あってはならないグレーな行為だった。
第一生命社内でも一定の影響力を持つ優績職員だっただけに、同事案を知った役員たちの衝撃はそうとう大きかったようだ。
同事案について、第一生命は「営業職員を守りたいので、個人が特定できるような形で記事にしないでもらいたい」としているが、はたして今後どこまで隠し通せるだろうか。
この事案がきっかけかは定かでないが、金融庁は今、明治安田生命への立ち入り検査で、副業や投資勧誘行為の有無について、営業職員へヒアリングを進めている。
もし同様の事例が多数見つかるようなことがあれば、金融庁の逆鱗(げきりん)に触れ、さらなる処分や規制強化があるかもしれない。
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この記事へのコメント
辞めるしかない・・・・
長年やってると理解できること・・・・
代理店主と異なり、募集人は数字で皆さん無理しなければ無理
仕方ない事
辞めたこと後悔しないこと
次の職探すのがベスト