節税保険で金融庁が頭を悩ます「規制」の抜け穴明治安田生命にも立ち入り検査で広がる波紋
節税保険とは経営者の死亡などに備える「経営者保険」の一種で、支払う保険料を会社の経費に算入できるために法人税を圧縮できるメリットがあり、中途解約した場合でも保険料の大半を解約返戻金として受け取れることから中小企業を中心に根強い人気がある保険商品になっています。
現在、節税保険を巡っては昨年7月にマニュライフ生命保険が、今年2月にはエヌエヌ生命保険と外資系2社が保険業法に基づく業務改善命令を受けています。
そんな中、金融庁は生命保険大手の明治安田生命保険に対して過度な節税が問題視されている中小企業経営者向け「節税保険」の販売実態を調べる方針から立ち入り検査を開始しました。
節税保険、金融庁が頭を悩ます「規制」の抜け穴明治安田生命にも立ち入り検査で広がる波紋
( 東洋経済 ONLINE 2023/02/27 6:40東洋経済 記者:中村 正毅 )
節税保険の販売をめぐってエヌエヌ生命に行政処分を下した金融庁。
いたちごっこが続く中、“撲滅”が難しい規制の抜け穴に頭を抱えている。
節税保険をめぐり、外資系のエヌエヌ生命保険に対して2月17日に行政処分を下した金融庁。
処分内容などを記した公表資料には、業務改善に向けて実施すべきこととして、適切な募集管理態勢の確立やビジネスモデルのあり方の検討など、さまざまな項目が並ぶ。
また処分理由に関する説明では、節税効果を過度に強調した保険募集が横行し、エヌエヌ生命として防止策が機能しているかの確認すら実施していない、という記載もある。
もはや「金融機関としての体をなしていない」(金融庁幹部)状態にあり、その経営責任は重大なはず。が、「経営責任の(所在の)明確化」という処分項目は、なぜか資料のどこにも見当たらない。
国外へ飛び立ったエヌエヌ生命の前社長
金融庁による行政処分において経営責任の明確化は、実施すべき項目として、必ずといっていいほど明記されているものだ。
2022年7月のマニュライフ生命保険に対する行政処分でも、処分項目のいちばん初めに書かれている。
さらに言えば、マニュライフ生命のケースでは節税保険の販売を主導した当時の社長らが、アフラック生命保険にすでに転職していた。
そのため転職組に対しては、経営責任をとらせる処分を金融庁が下せないという問題もあった。
それでも金融庁は責任追及の姿勢を緩めなかった。
金融機関を対象とした「フィットアンドプロパー原則」という、取締役の資質や適格性に関する規定を持ち出し、アフラック側に粘り強く対応を求めた。
その結果、前社長など転職組をアフラックの取締役から外したり、マニュライフから受け取った退職金を返納させたりするなど、あくまでアフラックの自主的な対応というかたちで処分につなげてみせたのだ。
転職による「逃げ得」を許さず、経営責任の明確化にこだわった金融庁が、いったいなぜエヌエヌ生命の経営陣に対しては、同じことを表立って求めないのか。
その理由は単純明快だ。エヌエヌ生命で節税売りを主導していた前社長が、親会社があるヨーロッパに飛び立ってしまっているからだ。
フィットアンドプロパー原則を持ち出して、何らかのかたちで責任をとらせたくても、当人が日本国内にいなければ不可能に近い。
エヌエヌ生命に対する行政処分で、経営責任の明確化という項目が盛り込まれず、「経営姿勢の明確化」という文言にすり替わっているのには、そうした背景がある。
金融庁にとって悩ましいのは、こうした現状が節税保険に対する規制の抜け穴になりかねないという点だ。
外資系生保などが海外の親会社から社長を送り込み、トップダウンで短期間のうちに節税保険を拡販し、金融庁の処分を受ける前に日本を離れてしまえば、経営責任をうまく回避できてしまうことになる。
であれば、節税効果が見込める保険商品をそもそも金融庁が認可しなければ、抜け穴を通るような行為も発生しないはずだが、ことはそう単純ではない。
そもそも保険商品の認可に際して、金融庁は税金部分にはタッチできず、保険料や保険金の設定などが適切になされているか、という点を主眼に審査している
企業が支払った保険料を、経費(損金)としてどこまで認めるかについて法人税基本通達などで決めているのは、あくまで国税庁だ。
そのため商品認可の手続き上、節税効果が見込めることを理由にして金融庁が首を横に振ることは現実的に難しい。
国税庁としても、保険を活用した租税回避行為が広がらないように、たびたび通達を改正して節税保険を一つずつ潰している。
だが、保険料の経費算入を全面的に不可としない限りは「節税保険は消滅しないだろう」と大手生保役員は話す。
金融庁や国税庁が規制を強化している現在も、抜け穴を通るようにして長期平準定期保険、変額定期保険といった商品を利用した節税術や、「30万特例」と呼ばれる全額損金算入が可能な特例措置を駆使した節税術がまかり通っており、いたちごっこは続いている。
衝撃を与えた明治安田生命への立ち入り検査
エヌエヌ生命に行政処分を下した3日後の2月20日、金融庁は国内大手の明治安田生命保険に対して立ち入り検査の実施を通告し、業界内に大きな衝撃が走った。
表向きは営業職員の管理態勢について調べるとしているが、「本当の狙いは節税保険ではないか」と大手生保のある幹部は読む。
明治安田生命もマニュライフ生命やエヌエヌ生命と同様に、「名義変更プラン」と呼ばれる保険の“節税売り”を強力に進めていた時期があるからだ(名義変更プランに関する詳細はこちら)。
名義変更による節税のカラクリを解説した指南書(私製の募集文書)の存在も取りざたされており、「立ち入り検査によってあぶり出そうとしているのではないか」(別の大手生保幹部)という見方もある。
規制の抜け穴を完全に封じるのは難しい中で、金融庁は当面、立ち入り検査などを通じて生保各社への圧力を強め、その実効性を高めていく方針のようだ。
明治安田生命に立ち入り開始 「節税保険」の実態調査 金融庁
( 時事通信社 3/4(土) 7:11配信 )
金融庁は3日、生命保険大手の明治安田生命保険に対する立ち入り検査を開始した。
過度な節税が問題視されている中小企業経営者向け「節税保険」の販売実態を調べる方針。
節税保険を巡っては、昨年7月にマニュライフ生命保険、今年2月にエヌエヌ生命保険と、外資系2社が保険業法に基づく業務改善命令を受けている。
節税保険は、経営者の死亡などに備える「経営者保険」の一種。
支払う保険料を会社の経費に算入できるため、法人税を圧縮できるメリットがある。
また、中途解約した場合でも保険料の大半を解約返戻金として受け取れ、中小企業を中心に根強い人気がある。
ただ、節税効果を過度にアピールする営業手法や、保険の趣旨に沿っていないことが問題視され、国税庁が課税ルールを見直してきた。
明治安田生命では昨年、営業職員による金銭詐取問題が発覚しており、金融庁は職員の管理体制などについても調査する見通しだ。
金融庁、明治安田に立ち入り検査 保険料着服で管理体制確認
( 産経新聞 2023/3/4 12:54 )
金融庁が、明治安田生命保険への立ち入り検査を始めたことが4日、分かった。
営業職員による保険料の着服などの事案を受け、管理体制を調べる。
また中小企業の経営者向け保険についても、過度な節税効果をうたった販売実態がないかどうか確認する。
明治安田生命は昨年6月、70代の営業職員の女性が複数回にわたって保険料を着服するなどして計約2千万円を不正に取得したと発表。生保業界では不正事案が相次ぎ、各社はコンプライアンス(法令順守)やリスク管理の徹底が課題となっている。
検査では「名義変更プラン」と呼ばれる節税保険も調べる。
経営者に多額の保険金をかけて法人名義で契約し、数年後に個人に名義変更して解約すると、保険料の大半を経営者が返戻金として受け取れる商品で、税負担を抑えられる。
金融庁は節税保険を巡り、マニュライフ生命保険(東京)とエヌエヌ生命保険(同)にそれぞれ業務改善命令を出している。

現在、節税保険を巡っては昨年7月にマニュライフ生命保険が、今年2月にはエヌエヌ生命保険と外資系2社が保険業法に基づく業務改善命令を受けています。
そんな中、金融庁は生命保険大手の明治安田生命保険に対して過度な節税が問題視されている中小企業経営者向け「節税保険」の販売実態を調べる方針から立ち入り検査を開始しました。
節税保険、金融庁が頭を悩ます「規制」の抜け穴明治安田生命にも立ち入り検査で広がる波紋
( 東洋経済 ONLINE 2023/02/27 6:40東洋経済 記者:中村 正毅 )
節税保険の販売をめぐってエヌエヌ生命に行政処分を下した金融庁。
いたちごっこが続く中、“撲滅”が難しい規制の抜け穴に頭を抱えている。
節税保険をめぐり、外資系のエヌエヌ生命保険に対して2月17日に行政処分を下した金融庁。
処分内容などを記した公表資料には、業務改善に向けて実施すべきこととして、適切な募集管理態勢の確立やビジネスモデルのあり方の検討など、さまざまな項目が並ぶ。
また処分理由に関する説明では、節税効果を過度に強調した保険募集が横行し、エヌエヌ生命として防止策が機能しているかの確認すら実施していない、という記載もある。
もはや「金融機関としての体をなしていない」(金融庁幹部)状態にあり、その経営責任は重大なはず。が、「経営責任の(所在の)明確化」という処分項目は、なぜか資料のどこにも見当たらない。
国外へ飛び立ったエヌエヌ生命の前社長
金融庁による行政処分において経営責任の明確化は、実施すべき項目として、必ずといっていいほど明記されているものだ。
2022年7月のマニュライフ生命保険に対する行政処分でも、処分項目のいちばん初めに書かれている。
さらに言えば、マニュライフ生命のケースでは節税保険の販売を主導した当時の社長らが、アフラック生命保険にすでに転職していた。
そのため転職組に対しては、経営責任をとらせる処分を金融庁が下せないという問題もあった。
それでも金融庁は責任追及の姿勢を緩めなかった。
金融機関を対象とした「フィットアンドプロパー原則」という、取締役の資質や適格性に関する規定を持ち出し、アフラック側に粘り強く対応を求めた。
その結果、前社長など転職組をアフラックの取締役から外したり、マニュライフから受け取った退職金を返納させたりするなど、あくまでアフラックの自主的な対応というかたちで処分につなげてみせたのだ。
転職による「逃げ得」を許さず、経営責任の明確化にこだわった金融庁が、いったいなぜエヌエヌ生命の経営陣に対しては、同じことを表立って求めないのか。
その理由は単純明快だ。エヌエヌ生命で節税売りを主導していた前社長が、親会社があるヨーロッパに飛び立ってしまっているからだ。
フィットアンドプロパー原則を持ち出して、何らかのかたちで責任をとらせたくても、当人が日本国内にいなければ不可能に近い。
エヌエヌ生命に対する行政処分で、経営責任の明確化という項目が盛り込まれず、「経営姿勢の明確化」という文言にすり替わっているのには、そうした背景がある。
金融庁にとって悩ましいのは、こうした現状が節税保険に対する規制の抜け穴になりかねないという点だ。
外資系生保などが海外の親会社から社長を送り込み、トップダウンで短期間のうちに節税保険を拡販し、金融庁の処分を受ける前に日本を離れてしまえば、経営責任をうまく回避できてしまうことになる。
であれば、節税効果が見込める保険商品をそもそも金融庁が認可しなければ、抜け穴を通るような行為も発生しないはずだが、ことはそう単純ではない。
そもそも保険商品の認可に際して、金融庁は税金部分にはタッチできず、保険料や保険金の設定などが適切になされているか、という点を主眼に審査している
企業が支払った保険料を、経費(損金)としてどこまで認めるかについて法人税基本通達などで決めているのは、あくまで国税庁だ。
そのため商品認可の手続き上、節税効果が見込めることを理由にして金融庁が首を横に振ることは現実的に難しい。
国税庁としても、保険を活用した租税回避行為が広がらないように、たびたび通達を改正して節税保険を一つずつ潰している。
だが、保険料の経費算入を全面的に不可としない限りは「節税保険は消滅しないだろう」と大手生保役員は話す。
金融庁や国税庁が規制を強化している現在も、抜け穴を通るようにして長期平準定期保険、変額定期保険といった商品を利用した節税術や、「30万特例」と呼ばれる全額損金算入が可能な特例措置を駆使した節税術がまかり通っており、いたちごっこは続いている。
衝撃を与えた明治安田生命への立ち入り検査
エヌエヌ生命に行政処分を下した3日後の2月20日、金融庁は国内大手の明治安田生命保険に対して立ち入り検査の実施を通告し、業界内に大きな衝撃が走った。
表向きは営業職員の管理態勢について調べるとしているが、「本当の狙いは節税保険ではないか」と大手生保のある幹部は読む。
明治安田生命もマニュライフ生命やエヌエヌ生命と同様に、「名義変更プラン」と呼ばれる保険の“節税売り”を強力に進めていた時期があるからだ(名義変更プランに関する詳細はこちら)。
名義変更による節税のカラクリを解説した指南書(私製の募集文書)の存在も取りざたされており、「立ち入り検査によってあぶり出そうとしているのではないか」(別の大手生保幹部)という見方もある。
規制の抜け穴を完全に封じるのは難しい中で、金融庁は当面、立ち入り検査などを通じて生保各社への圧力を強め、その実効性を高めていく方針のようだ。
明治安田生命に立ち入り開始 「節税保険」の実態調査 金融庁
( 時事通信社 3/4(土) 7:11配信 )
金融庁は3日、生命保険大手の明治安田生命保険に対する立ち入り検査を開始した。
過度な節税が問題視されている中小企業経営者向け「節税保険」の販売実態を調べる方針。
節税保険を巡っては、昨年7月にマニュライフ生命保険、今年2月にエヌエヌ生命保険と、外資系2社が保険業法に基づく業務改善命令を受けている。
節税保険は、経営者の死亡などに備える「経営者保険」の一種。
支払う保険料を会社の経費に算入できるため、法人税を圧縮できるメリットがある。
また、中途解約した場合でも保険料の大半を解約返戻金として受け取れ、中小企業を中心に根強い人気がある。
ただ、節税効果を過度にアピールする営業手法や、保険の趣旨に沿っていないことが問題視され、国税庁が課税ルールを見直してきた。
明治安田生命では昨年、営業職員による金銭詐取問題が発覚しており、金融庁は職員の管理体制などについても調査する見通しだ。
金融庁、明治安田に立ち入り検査 保険料着服で管理体制確認
( 産経新聞 2023/3/4 12:54 )
金融庁が、明治安田生命保険への立ち入り検査を始めたことが4日、分かった。
営業職員による保険料の着服などの事案を受け、管理体制を調べる。
また中小企業の経営者向け保険についても、過度な節税効果をうたった販売実態がないかどうか確認する。
明治安田生命は昨年6月、70代の営業職員の女性が複数回にわたって保険料を着服するなどして計約2千万円を不正に取得したと発表。生保業界では不正事案が相次ぎ、各社はコンプライアンス(法令順守)やリスク管理の徹底が課題となっている。
検査では「名義変更プラン」と呼ばれる節税保険も調べる。
経営者に多額の保険金をかけて法人名義で契約し、数年後に個人に名義変更して解約すると、保険料の大半を経営者が返戻金として受け取れる商品で、税負担を抑えられる。
金融庁は節税保険を巡り、マニュライフ生命保険(東京)とエヌエヌ生命保険(同)にそれぞれ業務改善命令を出している。
FC2 Blog Ranking

この記事へのコメント