「MS&AD」だけじゃない6,300人リストラで露わになった保険業界の未曽有の危機とは!
日本三メガ損保の一つであり損保会社と生保会社の両方を有する「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」が今月になってから大規模リストラの実施を発表したのですが、現在保険業界において損保、生保共にいずれもかつてない構造的なリスクを抱えており、保険業界全体に波及する可能性が考えられていることから現在保険業界が見舞われている危機的状況について解説した記事の掲載がありましたのでご紹介を痛いと思います。
「MS&AD」だけじゃない!「6,300人リストラ」で露わになった保険業界の未曽有の危機とは
( 幻冬舎 GOLD ONLINE 11/26(土) 11:32配信 )
日本三メガ損保の一つであり損保会社と生保会社の両方を有する「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」は、2022年11月22日、大規模リストラの実施を発表しました。
保険業界は損保、生保いずれもかつてない構造的なリスクを抱えており、業界全体に波及する可能性が考えられます。
現在保険業界が見舞われている危機的状況について解説します。
MS&ADホールディングスの人員削減計画とは
MS&ADホールディングスは、傘下に「三井住友海上火災保険株式会社」「あいおいニッセイ同和損害保険株式会社」の損害保険2社と、生命保険会社である「三井住友海上あいおい生命保険株式会社」を抱える持株会社です。
今回、投資家向けの インフォメーションミーティング で発表されたのは、従業員の18%にあたる6,300人を2025年度(2026年3月末決算)までに削減するということです。
これにより、人件費が200億円削減される見込みです。
なお、6,300人目標のうち、2023年3月末までに1,900人を削減することを見込んでいます。
人員削減にあわせて「DX推進による要員効率化、成長領域への要員再配置」への取り組みを行うとのことです。
3大メガ損保が発表した2022年9月中間決算において、東京海上ホールディングスは大幅減益、MS&ADホールディングスとSOMPOホールディングス2社はいずれも大幅な赤字を計上しました。
このことからすれば、台所事情が苦しいのはMS&ADホールディングスだけではないとみられ、他にも波及する可能性もあります。
背景には、損害保険業界、生命保険業界のそれぞれが危機的状況におかれているということがあります。
自然災害の増大で損保会社の経営が圧迫
損害保険業界においては、近年、特に火災保険の収支が著しく悪化しています。
日本損害保険協会「 火災保険における保険金支払いと収支の状況等 」において、2010年度~2019年度の火災保険の収支状況のデータが掲載されています。
これによれば、2010年度と2015年度以外は、大幅な赤字となっています。
なお、2020年についても、後述するように、2020年の火災保険の保険金支払額が甚大であることからすれば、大幅な赤字になるのは間違いありません。
ここまで火災保険の収支が悪化している原因は、近年、自然災害の頻発と激甚化により、保険金の支払いが急増しているからです。
2010年~2021年の自然災害による火災保険の支払保険金額の推移から読み取れることは2018年(7,079億円)と2019年(5,070億円)が突出し、2020年の2,196億円がそれに次ぐ数字となっています。
なお、2022年も9月の台風15号、10月の台風19号をはじめとして、火災保険の支払額が大きくなる見込みです。
このような実情のなか、火災保険の「参考純率」の引き上げが相次いで行われ、2022年10月に火災保険料の大幅値上げが行われたばかりです。
「参考準率」とは各損保会社が保険料を決める際の基準となる数字であり、「損害保険料率算出機構」が自然災害の発生確率等の様々な客観的データをもとに算出するものです。
2009年度以降に4回の改定が行われましたが、うち3回は2018年以降に相次いで行われたものです(2018年6月15日、2019年10月30日、2021年6月16日)。
しかも、火災保険の契約期間も、従来は最長で10年まで可能だったものが、5年まで短縮されました。
これらのことから、5年後くらいまでのごく近い将来でさえ、自然災害の発生状況を予測することが困難をきわめているということが推察されます。
生命保険業界も未曽有のリスク
また、MS&ADホールディングスの「三井住友海上あいおい生命」が属する生命保険業界も、危機的状況にあります。
まず、少子高齢化により、働き盛りの人が加入する生命保険のニーズが減少していくという大きな流れがあります。
それに加え、長引くマイナス金利政策で、従来人気があった「円建て」の終身保険や養老保険等の貯蓄性の保険は利率が悪くなっており、「米ドル建て」「変額」の保険に押されています。
三井住友海上あいおい生命の主力商品は、医療保険や収入保障保険(生命保険)、就業不能保険です。
これらのいわゆる「掛け捨て」の保険は、保障内容や保険料水準に関して他社との競争が激しくなりがちで、商品力、収益ともに突出することが難しいものです。
また、同社の貯蓄性の保険については円建ての商品に限られ、「米ドル建て」「変額」の保険は扱っていません。
加えて、2019年2月に「バレンタインショック」とよばれる法人保険の保険料の損金算入ルールの改定があり、法人向けの「節税保険」として人気があった「逓増定期保険」等の販売も大きく落ち込みました。
SOMPOホールディングス傘下の「SOMPOひまわり生命」、東京海上ホールディングス傘下の「東京海上日動あんしん生命」も、程度の差はあれ似たような構造を抱えています(東京海上日動あんしん生命は最近、変額型の養老保険の販売を開始しましたが、比較的後発ということもあり、先行きは未知数です)。
さらに、コロナ禍のなかで保険営業のあり方自体が大きく変わってきています。いずれ保険営業がAIにとってかわられる可能性も指摘されています。
このように、MS&ADホールディングスが見舞われているリスクは、同社だけの問題ではなく、保険業界全体にかかわる構造的リスクといえます。
損害保険も生命保険も、民間の商品でありながら、実質上、社会的セーフティネットとして大きな役割を果たすものであり、今後の保険業界の行く末が注目されます。

「MS&AD」だけじゃない!「6,300人リストラ」で露わになった保険業界の未曽有の危機とは
( 幻冬舎 GOLD ONLINE 11/26(土) 11:32配信 )
日本三メガ損保の一つであり損保会社と生保会社の両方を有する「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」は、2022年11月22日、大規模リストラの実施を発表しました。
保険業界は損保、生保いずれもかつてない構造的なリスクを抱えており、業界全体に波及する可能性が考えられます。
現在保険業界が見舞われている危機的状況について解説します。
MS&ADホールディングスの人員削減計画とは
MS&ADホールディングスは、傘下に「三井住友海上火災保険株式会社」「あいおいニッセイ同和損害保険株式会社」の損害保険2社と、生命保険会社である「三井住友海上あいおい生命保険株式会社」を抱える持株会社です。
今回、投資家向けの インフォメーションミーティング で発表されたのは、従業員の18%にあたる6,300人を2025年度(2026年3月末決算)までに削減するということです。
これにより、人件費が200億円削減される見込みです。
なお、6,300人目標のうち、2023年3月末までに1,900人を削減することを見込んでいます。
人員削減にあわせて「DX推進による要員効率化、成長領域への要員再配置」への取り組みを行うとのことです。
3大メガ損保が発表した2022年9月中間決算において、東京海上ホールディングスは大幅減益、MS&ADホールディングスとSOMPOホールディングス2社はいずれも大幅な赤字を計上しました。
このことからすれば、台所事情が苦しいのはMS&ADホールディングスだけではないとみられ、他にも波及する可能性もあります。
背景には、損害保険業界、生命保険業界のそれぞれが危機的状況におかれているということがあります。
自然災害の増大で損保会社の経営が圧迫
損害保険業界においては、近年、特に火災保険の収支が著しく悪化しています。
日本損害保険協会「 火災保険における保険金支払いと収支の状況等 」において、2010年度~2019年度の火災保険の収支状況のデータが掲載されています。
これによれば、2010年度と2015年度以外は、大幅な赤字となっています。
なお、2020年についても、後述するように、2020年の火災保険の保険金支払額が甚大であることからすれば、大幅な赤字になるのは間違いありません。
ここまで火災保険の収支が悪化している原因は、近年、自然災害の頻発と激甚化により、保険金の支払いが急増しているからです。
2010年~2021年の自然災害による火災保険の支払保険金額の推移から読み取れることは2018年(7,079億円)と2019年(5,070億円)が突出し、2020年の2,196億円がそれに次ぐ数字となっています。
なお、2022年も9月の台風15号、10月の台風19号をはじめとして、火災保険の支払額が大きくなる見込みです。
このような実情のなか、火災保険の「参考純率」の引き上げが相次いで行われ、2022年10月に火災保険料の大幅値上げが行われたばかりです。
「参考準率」とは各損保会社が保険料を決める際の基準となる数字であり、「損害保険料率算出機構」が自然災害の発生確率等の様々な客観的データをもとに算出するものです。
2009年度以降に4回の改定が行われましたが、うち3回は2018年以降に相次いで行われたものです(2018年6月15日、2019年10月30日、2021年6月16日)。
しかも、火災保険の契約期間も、従来は最長で10年まで可能だったものが、5年まで短縮されました。
これらのことから、5年後くらいまでのごく近い将来でさえ、自然災害の発生状況を予測することが困難をきわめているということが推察されます。
生命保険業界も未曽有のリスク
また、MS&ADホールディングスの「三井住友海上あいおい生命」が属する生命保険業界も、危機的状況にあります。
まず、少子高齢化により、働き盛りの人が加入する生命保険のニーズが減少していくという大きな流れがあります。
それに加え、長引くマイナス金利政策で、従来人気があった「円建て」の終身保険や養老保険等の貯蓄性の保険は利率が悪くなっており、「米ドル建て」「変額」の保険に押されています。
三井住友海上あいおい生命の主力商品は、医療保険や収入保障保険(生命保険)、就業不能保険です。
これらのいわゆる「掛け捨て」の保険は、保障内容や保険料水準に関して他社との競争が激しくなりがちで、商品力、収益ともに突出することが難しいものです。
また、同社の貯蓄性の保険については円建ての商品に限られ、「米ドル建て」「変額」の保険は扱っていません。
加えて、2019年2月に「バレンタインショック」とよばれる法人保険の保険料の損金算入ルールの改定があり、法人向けの「節税保険」として人気があった「逓増定期保険」等の販売も大きく落ち込みました。
SOMPOホールディングス傘下の「SOMPOひまわり生命」、東京海上ホールディングス傘下の「東京海上日動あんしん生命」も、程度の差はあれ似たような構造を抱えています(東京海上日動あんしん生命は最近、変額型の養老保険の販売を開始しましたが、比較的後発ということもあり、先行きは未知数です)。
さらに、コロナ禍のなかで保険営業のあり方自体が大きく変わってきています。いずれ保険営業がAIにとってかわられる可能性も指摘されています。
このように、MS&ADホールディングスが見舞われているリスクは、同社だけの問題ではなく、保険業界全体にかかわる構造的リスクといえます。
損害保険も生命保険も、民間の商品でありながら、実質上、社会的セーフティネットとして大きな役割を果たすものであり、今後の保険業界の行く末が注目されます。
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会社退職して開業した67歳知人
損保中心で第三分野の医療保険販売してきた状況でメインは損保
モーター系なんで個人で開業し専業で考えると
厳しい船出になるのかと生損保販売全てコンサルできないと大変
2年位で法人化の話を、昨年してたが今年4月に開業
荒波の中を小舟で進むのでしょう?乗合ならともかく専業
モーター系だと余裕は有るが専業だと厳しい話有り
経済がリセッション話題の中で動向に注目です
>がくがくダックさん
>
>追伸・・・・
>
>会社退職して開業した67歳知人
>損保中心で第三分野の医療保険販売してきた状況でメインは損保
>モーター系なんで個人で開業し専業で考えると
>厳しい船出になるのかと生損保販売全てコンサルできないと大変
>2年位で法人化の話を、昨年してたが今年4月に開業
>荒波の中を小舟で進むのでしょう?乗合ならともかく専業
>モーター系だと余裕は有るが専業だと厳しい話有り
>経済がリセッション話題の中で動向に注目です
がくがくダックさん、今晩は!
いつもコメントをありがとうございます。
今年も残り少なくなってきましたね。
来年も保険業界にとっては色々な面でなかなか厳しい状況下になってくるのではないかと推察しております。
今後も保険業界の動向についてご紹介をしていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願い致します。