かんぽ生命が不正に懲りず「自爆営業」促進キャンペーンで“目標必達”に逆戻り
営業再開後も新規契約に伸び悩む日本郵政グループのかんぽ生命保険ですが、苦境を打開するためにかんぽ生命が講じた策が“禁じ手”だった社員が自腹で保険を契約する「自爆」を奨励していそうなのです。
ダイヤモンド編集部が自爆促進キャンペーンともいえる内部資料を独自に入手し、特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の番外編でこのキャンペーンの内実を明らかにするとともに契約獲得のために社員にプレッシャーをかけ、かつての手法に回帰していく日本郵政のあきれた実態に迫る記事を掲載していましたのでご紹介をしたいと思います。
かんぽ生命が「自爆営業」促進キャンペーン!不正に懲りず“目標必達”に逆戻り【内部資料入手】
(ダイヤモンド編集部 2022.10.6 5:00枝翔太郎 )
営業再開後も新規契約が伸び悩む日本郵政グループのかんぽ生命保険。
苦境を打開するために、かんぽ生命が講じた策は“禁じ手”だった。
社員が自腹で保険を契約する「自爆」を奨励していたのだ。
ダイヤモンド編集部は、自爆促進キャンペーンともいえる内部資料を独自に入手。
特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の番外編では、このキャンペーンの内実を明らかにするとともに、契約獲得のために社員にプレッシャーをかけ、かつての手法に回帰していく日本郵政のあきれた実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
自爆した社員に豪華商品が当たる?「インナーキャンペーン」の実態とは
かつて不適切営業で世を騒がせたかんぽ生命保険が、“禁じ手”であるはずの自爆営業(営業実績を上げるために社員が本来、不要な保険などの契約を自腹で結ぶこと)に再び手を染めている――。
そんなあきれた実態がダイヤモンド編集部の調べで明らかになった。
かんぽ生命の不適切販売が問題になり、かんぽ生命と日本郵便が保険の営業自粛に追い込まれたのは、わずか3年前の2019年のこと。
今年4月に営業目標を復活させ、本格的な営業再開へかじを切ったばかりだった(本特集の#3『かんぽ生命営業再開でも「保険契約ゼロ」の郵便局が続出する理由、コンプラ順守の自縄自縛』参照)。
新たなスタートを切ったかんぽ生命だが、契約獲得の実績は営業自粛前の水準には遠く及ばない。
そのため現場では、日に日に社員へのプレッシャーが強まっている。
日本郵政の現役社員からはこんな声が上がる。
「『自爆』を『インナー』と呼んだり、『ノルマ』を『目標』に言い換えたりしているだけで、実態は不適切営業が行われていた以前と大して変わっていない」
その最たる例が、今秋かんぽ生命が実施している「インナー」推進キャンペーンだ。社内でこの案内が出たとき、現場の社員たちは「明らかな自爆促進。契約実績が思うように上がっていないことを証明しているようなものだ」とあきれ返ったという。
ダイヤモンド編集部は、本キャンペーンの内部資料を独自に入手した。社員がかんぽ生命と契約を結ぶと、抽選で“豪華”商品がもらえるという。
これでは、自爆を推進するインセンティブを堂々と用意しているようなものだ。
苦肉の策で自爆促進の日本郵政日に日に強まる社員へのプレッシャー
今回の「日本郵政グループ社員向けキャンペーン」では、日本郵政グループと関係会社の社員が対象となる。
今年9月1日~10月31日の期間中にかんぽ生命の保険に申し込み、契約が成立すれば、抽選で商品が当たる。
商品は、電気ケトル、トースター、カレーの詰め合わせのいずれかで、非常に“豪華”なラインアップとなっているが、残念ながら商品は選べない。
当選総数は、「インナー」の語呂合わせのつもりなのか、170人のようだ。
キャンペーンの資料を見ると、ご丁寧にも「本キャンペーンについて、日本郵政グループ社員以外のお客さまへのチラシ配布やキャンペーンの内容周知は行わないでください」との注意書きがある。
「インナー」の実態を露見させまいとする思惑が透けて見える。相当な確信犯である。
果たして、今回のキャンペーンによってかんぽ生命に加入する社員がどの程度いるのだろうか。ある現役社員は「私もキャンペーンに参加していないし、周りの人も入っていない」と冷ややかに語る。
当選商品が、保険に加入してまで手に入れたい物なのかという疑問はさておき、そもそも保険は“景品欲しさ”に加入するものであろうはずがない。
キャンペーンが、伸び悩む契約実績を“水増し”するための苦肉の策であろうことは容易に察しが付く。
実は、これまでも「インナー」商戦の実施は珍しくなかった。
「キャンペーン開始前の今年夏ごろ、契約実績ゼロの郵便局が“ゼロ”を脱するために、郵便局長自ら『インナー』に走った事例が複数あった」(日本郵政社員)というのだ。
「インナー」の例からも明らかなように、現場の社員たちは、不適切営業が発覚する以前の「目標必達」のカルチャーが復活したと感じ始めている。
ある日本郵政社員はこう嘆く。
「社員同士を競わせたり、プレッシャーをかけたりして尻をたたくようになり、以前の状態に戻ってきた。怒鳴られるなどの露骨な“ペナルティー”がなくなっただけで、実態はかつてとあまり変わっていない」
この社員は連日、地区会の保険担当から「目標必達お願いします」というメールが送られてきたり、電話で「目標達成できそうですか?」と聞かれたりするという。
「はっきり言って目標達成は不可能だが、『できません』とは言えないので、電話では『頑張ります』と答えるしかない」(前述の社員)
社員へのプレッシャーはこれにとどまらない。ある地区では、地区内で新規契約を取れた社員の所属局や名前のリストが連日配布されている。
これはあくまで「新規契約受理の御礼」という体裁を取っている。
書類の下には、「新規契約の受理を促すものではありません」という注意書きが非常に小さな文字ながらも記されており、強制的な営業施策ではないことをしっかりと主張している。
しかし、同地区の社員によると、「リストに名前が載っていなければ、契約の実績を上げられていないということになる。このリストを配ることで、実績のない社員は日々プレッシャーにさらされ続ける」というのが実情のようだ。
下半期は社員にさらなるプレッシャー?日本郵政が変われない理由とは
しかし、である。現場の社員たちの話を聞く限り、社員にプレッシャーをかけ続けていても、営業実績は日本郵政が想定しているようには伸びていないようだ。
東海地方の郵便局に勤める社員は、こう不安を口にする。
「うちの局は目標の半分くらいの実績しか上げていないが、近隣の局と比べればまだましな方だ。上半期は、相当な数の局が大幅な未達となるはずで、10月以降は、実績を上げられない社員にますますプレッシャーがかかるようになるのでは――」
社員にプレッシャーをかけ、自爆をさせてでも実績を上げようとする姿勢は、かんぽ問題発覚以前から何ら変わっていない。
しかも、社員の可処分所得を減らすことになる自爆営業は、横領など不正の温床につながりかねないため、一般的には是正する傾向にある。
それでもかんぽ生命が自爆を促進している背景には、半官半民の変われない組織体質がある。
それについては、本特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』で断じた通りだ。
保険(共済)の自爆営業に手を染めている農協と同様で、昭和を引きずったままの巨大組織なのだ。
関東地方の元郵便局長は、「かんぽ生命の不適切販売の問題があったばかりなのに、上層部は現場の声に耳を傾けようとしない。社員たちは、インナーという形で社員に自己犠牲を強いる会社に不信感を募らせている」とため息をつく。
今回の自爆営業の復活は、変革を宣言したはずの日本郵政の凋落ぶりを雄弁に物語っている。
Key Visual by Noriyo Shinoda, Kanako Onda

ダイヤモンド編集部が自爆促進キャンペーンともいえる内部資料を独自に入手し、特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の番外編でこのキャンペーンの内実を明らかにするとともに契約獲得のために社員にプレッシャーをかけ、かつての手法に回帰していく日本郵政のあきれた実態に迫る記事を掲載していましたのでご紹介をしたいと思います。
かんぽ生命が「自爆営業」促進キャンペーン!不正に懲りず“目標必達”に逆戻り【内部資料入手】
(ダイヤモンド編集部 2022.10.6 5:00枝翔太郎 )
営業再開後も新規契約が伸び悩む日本郵政グループのかんぽ生命保険。
苦境を打開するために、かんぽ生命が講じた策は“禁じ手”だった。
社員が自腹で保険を契約する「自爆」を奨励していたのだ。
ダイヤモンド編集部は、自爆促進キャンペーンともいえる内部資料を独自に入手。
特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の番外編では、このキャンペーンの内実を明らかにするとともに、契約獲得のために社員にプレッシャーをかけ、かつての手法に回帰していく日本郵政のあきれた実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
自爆した社員に豪華商品が当たる?「インナーキャンペーン」の実態とは
かつて不適切営業で世を騒がせたかんぽ生命保険が、“禁じ手”であるはずの自爆営業(営業実績を上げるために社員が本来、不要な保険などの契約を自腹で結ぶこと)に再び手を染めている――。
そんなあきれた実態がダイヤモンド編集部の調べで明らかになった。
かんぽ生命の不適切販売が問題になり、かんぽ生命と日本郵便が保険の営業自粛に追い込まれたのは、わずか3年前の2019年のこと。
今年4月に営業目標を復活させ、本格的な営業再開へかじを切ったばかりだった(本特集の#3『かんぽ生命営業再開でも「保険契約ゼロ」の郵便局が続出する理由、コンプラ順守の自縄自縛』参照)。
新たなスタートを切ったかんぽ生命だが、契約獲得の実績は営業自粛前の水準には遠く及ばない。
そのため現場では、日に日に社員へのプレッシャーが強まっている。
日本郵政の現役社員からはこんな声が上がる。
「『自爆』を『インナー』と呼んだり、『ノルマ』を『目標』に言い換えたりしているだけで、実態は不適切営業が行われていた以前と大して変わっていない」
その最たる例が、今秋かんぽ生命が実施している「インナー」推進キャンペーンだ。社内でこの案内が出たとき、現場の社員たちは「明らかな自爆促進。契約実績が思うように上がっていないことを証明しているようなものだ」とあきれ返ったという。
ダイヤモンド編集部は、本キャンペーンの内部資料を独自に入手した。社員がかんぽ生命と契約を結ぶと、抽選で“豪華”商品がもらえるという。
これでは、自爆を推進するインセンティブを堂々と用意しているようなものだ。
苦肉の策で自爆促進の日本郵政日に日に強まる社員へのプレッシャー
今回の「日本郵政グループ社員向けキャンペーン」では、日本郵政グループと関係会社の社員が対象となる。
今年9月1日~10月31日の期間中にかんぽ生命の保険に申し込み、契約が成立すれば、抽選で商品が当たる。
商品は、電気ケトル、トースター、カレーの詰め合わせのいずれかで、非常に“豪華”なラインアップとなっているが、残念ながら商品は選べない。
当選総数は、「インナー」の語呂合わせのつもりなのか、170人のようだ。
キャンペーンの資料を見ると、ご丁寧にも「本キャンペーンについて、日本郵政グループ社員以外のお客さまへのチラシ配布やキャンペーンの内容周知は行わないでください」との注意書きがある。
「インナー」の実態を露見させまいとする思惑が透けて見える。相当な確信犯である。
果たして、今回のキャンペーンによってかんぽ生命に加入する社員がどの程度いるのだろうか。ある現役社員は「私もキャンペーンに参加していないし、周りの人も入っていない」と冷ややかに語る。
当選商品が、保険に加入してまで手に入れたい物なのかという疑問はさておき、そもそも保険は“景品欲しさ”に加入するものであろうはずがない。
キャンペーンが、伸び悩む契約実績を“水増し”するための苦肉の策であろうことは容易に察しが付く。
実は、これまでも「インナー」商戦の実施は珍しくなかった。
「キャンペーン開始前の今年夏ごろ、契約実績ゼロの郵便局が“ゼロ”を脱するために、郵便局長自ら『インナー』に走った事例が複数あった」(日本郵政社員)というのだ。
「インナー」の例からも明らかなように、現場の社員たちは、不適切営業が発覚する以前の「目標必達」のカルチャーが復活したと感じ始めている。
ある日本郵政社員はこう嘆く。
「社員同士を競わせたり、プレッシャーをかけたりして尻をたたくようになり、以前の状態に戻ってきた。怒鳴られるなどの露骨な“ペナルティー”がなくなっただけで、実態はかつてとあまり変わっていない」
この社員は連日、地区会の保険担当から「目標必達お願いします」というメールが送られてきたり、電話で「目標達成できそうですか?」と聞かれたりするという。
「はっきり言って目標達成は不可能だが、『できません』とは言えないので、電話では『頑張ります』と答えるしかない」(前述の社員)
社員へのプレッシャーはこれにとどまらない。ある地区では、地区内で新規契約を取れた社員の所属局や名前のリストが連日配布されている。
これはあくまで「新規契約受理の御礼」という体裁を取っている。
書類の下には、「新規契約の受理を促すものではありません」という注意書きが非常に小さな文字ながらも記されており、強制的な営業施策ではないことをしっかりと主張している。
しかし、同地区の社員によると、「リストに名前が載っていなければ、契約の実績を上げられていないということになる。このリストを配ることで、実績のない社員は日々プレッシャーにさらされ続ける」というのが実情のようだ。
下半期は社員にさらなるプレッシャー?日本郵政が変われない理由とは
しかし、である。現場の社員たちの話を聞く限り、社員にプレッシャーをかけ続けていても、営業実績は日本郵政が想定しているようには伸びていないようだ。
東海地方の郵便局に勤める社員は、こう不安を口にする。
「うちの局は目標の半分くらいの実績しか上げていないが、近隣の局と比べればまだましな方だ。上半期は、相当な数の局が大幅な未達となるはずで、10月以降は、実績を上げられない社員にますますプレッシャーがかかるようになるのでは――」
社員にプレッシャーをかけ、自爆をさせてでも実績を上げようとする姿勢は、かんぽ問題発覚以前から何ら変わっていない。
しかも、社員の可処分所得を減らすことになる自爆営業は、横領など不正の温床につながりかねないため、一般的には是正する傾向にある。
それでもかんぽ生命が自爆を促進している背景には、半官半民の変われない組織体質がある。
それについては、本特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』で断じた通りだ。
保険(共済)の自爆営業に手を染めている農協と同様で、昭和を引きずったままの巨大組織なのだ。
関東地方の元郵便局長は、「かんぽ生命の不適切販売の問題があったばかりなのに、上層部は現場の声に耳を傾けようとしない。社員たちは、インナーという形で社員に自己犠牲を強いる会社に不信感を募らせている」とため息をつく。
今回の自爆営業の復活は、変革を宣言したはずの日本郵政の凋落ぶりを雄弁に物語っている。
Key Visual by Noriyo Shinoda, Kanako Onda
FC2 Blog Ranking

この記事へのコメント
結局、改善できるわけない
自爆して会社は困らない自爆した本人が貧困になり
辞めたくても辞めれない・・・・・
保険以外でも色々販売されてるので自爆営業の進めは有りでしょうね
保険業法改正してもノルマが、無くなら無い限り無理
比較推奨とか法律に決まれど専業で有る以上
商品構成悪くても販売するしかなく無理押し以前と変わらず不正販売は消えないでしょうね
>がくがくダックさん
>
>コロナ・物価高・・・・・
>結局、改善できるわけない
>自爆して会社は困らない自爆した本人が貧困になり
>辞めたくても辞めれない・・・・・
>保険以外でも色々販売されてるので自爆営業の進めは有りでしょうね
>
>保険業法改正してもノルマが、無くなら無い限り無理
>比較推奨とか法律に決まれど専業で有る以上
>商品構成悪くても販売するしかなく無理押し以前と変わらず不正販売は消えないでしょうね
がくがくダックさん、こんにちは!
いつもコメントをありがとうございます。
コロナによる経済状況下での対面による営業が出来なくなり、Webによる営業に限られるとネット販売に強い保険会社以外はなかなか厳しい状況にあると思っています。
そのような中での「自爆営業」が広がってきたのどろうと感じているもののそれでも「自爆営業」は許されるものではないとも思っています。
陰に隠れて不正販売は減らないだろうとも思っていますが、それでもやはり不正な営業活動は許されるものではないのも確かだと思っています。