ビッグモーター不正請求により窮地の損保ジャパン組織的関与の疑い強まる中で不可解な取引再開
中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題をめぐり損保ジャパンが苦しい立場に追い込まれ、損保ジャパンは不正請求が発生した原因について限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理し、不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることにより一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していたようです。
ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきているために9月に入ってから取引を再び停止したものの損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥ったようです。
しかし、こうした批判に対して損保ジャパンから反論があってもおかしくないのですが、そうした声はまだ聞こえてこず、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろうと言われています。
ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開
( 東洋経済ONLINE 2022/09/15 5:20 )東洋経済 記者 中村 正毅
中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区、兼重宏行社長)による保険金の不正請求問題をめぐって、損保ジャパンが苦しい立場に追い込まれている。
損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。
不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた。
ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって、不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきている。
結局、9月に入り取引を再び停止したが、損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている。
こうした批判に、損保ジャパンから反論があってもおかしくないが、そうした声はまだ聞こえてこない。
それは、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろう。
実態調査の問題点
これまでの経緯を振り返りながら、損保ジャパンの対応における問題点を改めて整理していこう。
まずは、冒頭でも触れた不正請求の実態調査に対するスタンスだ。
ビッグモーター側の自主調査によって、関東地域の4つ工場で不正請求が発生していることが明確になったのは、6月末のこと。取引のある損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は複数の工場で不正が発覚したことで、組織的関与の疑いを強めるとともに、不正請求被害の全容解明に向けて、追加調査の必要性についてそれぞれ社内で議論していた。
自動車保険の販売代理店でもあるビッグモーターと、それぞれ数十億円の取引がある3社が一丸となり、不正請求に対して毅然と対応するかに思われた。
だが、7月中旬になると風向きが大きく変わる。
損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」(大手損保役員)からだ。
ビッグモーター社長の不可解な訪問
実はその7月中旬、「(ビッグモーターの)兼重社長がうちの役員を訪ねてきている」と損保ジャパンのある幹部は明かす。
そこで何が話し合われたのかは不明だが、この幹部によると面談を境に、ビッグモーターへの対応方針が大きく変わったようだ。
まずは兼重社長との面談から数日後、ビッグモーターの社内で東京海上と三井住友海上の自賠責(自動車損害賠償責任保険)の取り扱いを一部で「停止するよう指示が出ている」(ビッグモーター関係者)。
7月下旬には、3社ともにストップしていたビッグモーターへの事故車の修理紹介を、損保ジャパンだけが再開している。
損保ジャパンは不正請求された保険金の返還や、不正請求の対象になった車両の持ち主への経緯説明を、ビッグモーター側に求めてすらいない段階で事故車の修理紹介を再開している。コンプライアンス(法令順守)軽視、顧客軽視という批判を受けても仕方がない状況を、自ら招いているように映る。
不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。
そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」(大手損保役員)という。
これまでの説明の辻褄がもはや合わない状況に陥ってしまっている。
契約者の払う保険料にも影響か
ここで押さえておきたいのは、今回のビッグモーターをめぐる不正請求の問題が、ビッグモーターとの取引の有無にかかわらず、3社の自動車保険の契約者全体に影響が及ぶかもしれないという点だ。
杞憂に終わるかもしれないが、もし不正請求が過去を含めて組織的かつ大規模に行われていた場合、損保会社にとって費用となる保険金が必要以上に膨らんでいたことになる。
そうすると、自動車保険の契約者が支払う保険料の計算に影響していた可能性があるわけだ。
それゆえ、不正請求被害の全容解明に向けた調査は損保会社として不可欠なはずだ。
自動車保険の契約獲得という営業成績の維持向上を狙って、それをおざなりにしていたとすれば、損保ジャパンだけでなく、業界全体の信用問題にも発展しかねない。
折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。
現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。
顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる。

ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきているために9月に入ってから取引を再び停止したものの損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥ったようです。
しかし、こうした批判に対して損保ジャパンから反論があってもおかしくないのですが、そうした声はまだ聞こえてこず、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろうと言われています。
ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開
( 東洋経済ONLINE 2022/09/15 5:20 )東洋経済 記者 中村 正毅
中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区、兼重宏行社長)による保険金の不正請求問題をめぐって、損保ジャパンが苦しい立場に追い込まれている。
損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。
不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた。
ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって、不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきている。
結局、9月に入り取引を再び停止したが、損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている。
こうした批判に、損保ジャパンから反論があってもおかしくないが、そうした声はまだ聞こえてこない。
それは、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろう。
実態調査の問題点
これまでの経緯を振り返りながら、損保ジャパンの対応における問題点を改めて整理していこう。
まずは、冒頭でも触れた不正請求の実態調査に対するスタンスだ。
ビッグモーター側の自主調査によって、関東地域の4つ工場で不正請求が発生していることが明確になったのは、6月末のこと。取引のある損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は複数の工場で不正が発覚したことで、組織的関与の疑いを強めるとともに、不正請求被害の全容解明に向けて、追加調査の必要性についてそれぞれ社内で議論していた。
自動車保険の販売代理店でもあるビッグモーターと、それぞれ数十億円の取引がある3社が一丸となり、不正請求に対して毅然と対応するかに思われた。
だが、7月中旬になると風向きが大きく変わる。
損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」(大手損保役員)からだ。
ビッグモーター社長の不可解な訪問
実はその7月中旬、「(ビッグモーターの)兼重社長がうちの役員を訪ねてきている」と損保ジャパンのある幹部は明かす。
そこで何が話し合われたのかは不明だが、この幹部によると面談を境に、ビッグモーターへの対応方針が大きく変わったようだ。
まずは兼重社長との面談から数日後、ビッグモーターの社内で東京海上と三井住友海上の自賠責(自動車損害賠償責任保険)の取り扱いを一部で「停止するよう指示が出ている」(ビッグモーター関係者)。
7月下旬には、3社ともにストップしていたビッグモーターへの事故車の修理紹介を、損保ジャパンだけが再開している。
損保ジャパンは不正請求された保険金の返還や、不正請求の対象になった車両の持ち主への経緯説明を、ビッグモーター側に求めてすらいない段階で事故車の修理紹介を再開している。コンプライアンス(法令順守)軽視、顧客軽視という批判を受けても仕方がない状況を、自ら招いているように映る。
不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。
そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」(大手損保役員)という。
これまでの説明の辻褄がもはや合わない状況に陥ってしまっている。
契約者の払う保険料にも影響か
ここで押さえておきたいのは、今回のビッグモーターをめぐる不正請求の問題が、ビッグモーターとの取引の有無にかかわらず、3社の自動車保険の契約者全体に影響が及ぶかもしれないという点だ。
杞憂に終わるかもしれないが、もし不正請求が過去を含めて組織的かつ大規模に行われていた場合、損保会社にとって費用となる保険金が必要以上に膨らんでいたことになる。
そうすると、自動車保険の契約者が支払う保険料の計算に影響していた可能性があるわけだ。
それゆえ、不正請求被害の全容解明に向けた調査は損保会社として不可欠なはずだ。
自動車保険の契約獲得という営業成績の維持向上を狙って、それをおざなりにしていたとすれば、損保ジャパンだけでなく、業界全体の信用問題にも発展しかねない。
折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。
現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。
顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる。
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