住友生命「営業職員の経費は自己負担」の不合理菓子代やカレンダー代の負担は労基法違反か
生命保険会社の営業職員が必要とするガソリン代や名刺代などは職員が自己負担させられているのですが、こうした仕組みに対する職員の不満は高まっており、訴訟に発展するケースも発生しているそうです。
今年の夏も暑中見舞いのハガキを契約者と見込客の全員に送ったそうなのですが、会社から年賀状や暑中見舞いを全顧客に送るようにと言われているそうなのですが、なぜそのハガキ代や送料を営業職員が負担するのか住友生命保険の首都圏の営業拠点に勤める職員はこう憤っているそうです。
関西圏の大樹生命保険で働く営業職員は営業時の駐車場代やガソリン代、お客様との打ち合わせ時の飲食代、名刺代などあらゆるものが自己負担となっており、給与については最低賃金が保障されているもののこうした費用がかかるので、結局は最低賃金を下回ることもあると嘆いているそうです。
住友生命「営業職員の経費は自己負担」の不合理菓子代やカレンダー代の負担は労基法違反か
( 東洋経済ONLINE 2022/08/17 8:00 東洋経済 記者:高見 和也 )
生命保険会社の営業職員が必要とするガソリン代や名刺代などは、職員が自己負担させられている。
こうした仕組みに対する職員の不満は高まっており、訴訟に発展するケースも発生している。
「今年の夏も暑中見舞いのハガキを契約者と見込客の全員に送った。会社から年賀状や暑中見舞いを全顧客に送るように、と言われているが、なぜそのハガキ代や送料を営業職員が負担するのか」
住友生命保険の首都圏の営業拠点に勤める職員はこう憤る。
関西圏の大樹生命保険で働く営業職員は、「営業時の駐車場代やガソリン代、お客様との打ち合わせ時の飲食代、名刺代などあらゆるものが自己負担。給与については最低賃金が保障されているが、こうした費用がかかるので、結局は最低賃金を下回ることもある」と嘆く。
住友生命を相手取り、訴訟も
営業活動に絡む経費のほとんどを自己負担とさせられることに対して、営業職員の不満が高まっている。
そうした中、訴訟に発展するケースも出てきた。
住友生命の京都支社に勤務する営業職員Aさん(50代、女性)が、営業活動に関わる費用(営業費用)を給与から控除するのは労働基準法などに違反するとして2019年に会社を訴えたのだ。
「(生命保険)業界全体で脱法行為をしているという認識はないですか?」
「おっしゃっている意味がよくわかりませんが……」
2022年7月に京都地裁で行われた口頭弁論で、証人として出廷した住友生命の営業人事部の担当者は、原告側弁護士の質問に答えを濁した。
Aさんは同社の営業職員として20年以上のキャリアがある。
Aさんは2012年10月から2018年12月までの間、給与から控除された「携帯端末使用料」(月額2950円)や「会社斡旋物品代」(同300円~6万円)など、約210万円の支払いを会社側に求めている。
携帯端末使用料は営業活動で使用するタブレット端末の利用代金(控除は2018年7月まで)のことで、会社斡旋物品代は会社のロゴ入りお菓子代(数百円)やカレンダー(1部100円前後)などだ。
物品代には住友生命のCSR活動の一環である「絵画コンクール」の画用紙代(1枚10円)や、それに参加した子供への記念品代(数十円から数百円)などの費用も含まれる。
さらに、住友生命が制作した中小企業の社長向け情報誌『オーナーズアイ』(1部60円)や広報誌『Sumisei Weekly』(1部5円)など小冊子の費用も「機関控除金」名目で給与から差し引かれている。
100%子会社を通じ、物品を購入
中でも会社斡旋物品は、営業職員が担当している企業などを訪問した際に、見込客や契約者との関係づくりのために活用されている。
物品の多くは、住友生命の100%子会社である「住生物産」から営業職員が購入し、その費用が毎月の給与から控除されている。
今回の訴訟において、原告側は主に2つのことを主張している。
1つ目は、労働基準法で定められた賃金全額払いの原則だ。
同法24条1項では、使用者が労働者の賃金から金員を控除したり、事業主の事業にかかる業務遂行について生じた費用を、労働者に負担させる行為を禁止している。
原告側は不当に控除された賃金の支払いと、被告の不法行為に対する損害賠償を請求している。
2つ目は、民法で定められた不当利得返還請求だ。
民法703条を今回の裁判に当てはめると、「住友生命は原告のAさんから賃金を控除することで同額の利得を得ている。その一方、Aさんは同額の損害を被っている」ということになる。
これに対し、住友生命は以下のように反論している。
まず、営業職員が配る情報誌や広報誌については、「営業職員ごとの営業スタイルによって、そもそも利用するか否か、利用するとしても営業職員によって部数が大幅に異なっている。そのため、被告(住友生命)は営業職員に対して利用を提案するにとどまり、義務付けているわけではない」と主張。
会社斡旋物品については、「子会社の住生物産などが販売しており、被告が販売しているものではないから、被告が原告に費用を負担させているわけではない。被告は本件物品の提供主体ではなく、当該提供主体(住生物産など)に対して、代金の支払いを代行しているに過ぎない」と説明する。
さらに、「営業費用を原告の負担とする合意が、被告と住友生命労働組合との労使協定によって結ばれている」とも主張する。
営業費用を出さないなら、辞めるしかない
原告と被告の主張は平行線をたどっているが、7月の裁判では、会社斡旋物品などを購入せざるを得ない状況に追い込まれることを原告のAさんが説明する一幕もあった。
Aさんの説明によると、営業費用の負担について上司に異議を申し立てたところ、「営業費用を出さないのであれば、辞めるしかないね」と言われた。
また、営業拠点の朝礼で、住生物産の担当者から「斡旋物品の購入数が少ないから、皆さん買ってね!」と勧められたという。
さらに、顧客から小冊子やカレンダーなどを「欲しい」という要望があれば、断ることはできないという。
今回の訴訟は、営業職員チャネルを持つ他の生命保険会社にとっても対岸の火事ではない。
営業職員は正社員として採用されるが、税法上は個人事業主であり、営業費用は営業職員の自己負担となっている。
住友生命以外の会社も同じ仕組みを採用している。
しかも各社とも自社のグループ内に、営業職員に対して各種物品を斡旋する販売会社がある。
住生物産に相当するのが、日本生命グループのニッセイ商事、第一生命グループの日本物産、明治安田生命グループの明治安田商事だ。各社とも営業職員に物品を購入させることで収益を得ている。
そして、当然ながら各グループの連結決算の利益にも貢献している。
ちなみに、現在の大手生保4グループの物品販売会社の社長は、本体生保の執行役員経験者などが務めている。
大手生保4グループの営業用物品販売会社
物品販売会社(所属グループ) 社長名(前職) 売上高 純利益 利益剰余金
住生物産(住友生命) 河野路利(住友生命近畿 32億円 9000万円 9億8000万円円
北陸法人支援部長)
ニッセイ商事(日本生命)松本吉弘(日本生命執行役員)75億円1億5000万円35億8000万円
日本物産(第一生命)守口光徳(第一生命常務執行役員)188億円7000万円88億7000万円
明治安田商事(明治安田生命)水野剛(明治安田生命執行役)56億円8000万円8億8000万円
(注)2022年3月期。各社とも営業職員向け物品斡旋以外の事業も展開
(出所)官報などをもとに編集部作成
<strong>手取りが減って不適切募集に走る職員も
今回の裁判で住友生命のAさんは、「営業職員が負担する物品の値段は、会社が一方的に決めているうえ、値上げも繰り返し行われている。営業費用の負担が増えれば給与の手取り額が減り、それを補おうして不適切な募集行為を行う営業職員もいる。(営業費用の負担によって)お客様に大変なご迷惑をかけてしまっている」と訴えている。
「給与から営業費用や必要経費を除いたら、残ったお金は月額数万円になった」
コロナ禍で対面営業に制約がかかっており、コロナ以前の給与水準を維持できず、上記のように訴える営業職員は少なくない。
Aさんが言うように、自らの処遇に満足していない営業職員が顧客を満足させるサービスを提供することは困難だろう。
生命保険営業の世界ではこれまで、営業職員は営業に関わる費用の負担を当たり前のように会社から強いられてきた。
だが、それは労働基準法に抵触していないのか。また、営業職員の費用負担によって、会社が利益を獲得するビジネスモデルに問題はないのか。法的にも道義的にも問い直す時期に来ている。

今年の夏も暑中見舞いのハガキを契約者と見込客の全員に送ったそうなのですが、会社から年賀状や暑中見舞いを全顧客に送るようにと言われているそうなのですが、なぜそのハガキ代や送料を営業職員が負担するのか住友生命保険の首都圏の営業拠点に勤める職員はこう憤っているそうです。
関西圏の大樹生命保険で働く営業職員は営業時の駐車場代やガソリン代、お客様との打ち合わせ時の飲食代、名刺代などあらゆるものが自己負担となっており、給与については最低賃金が保障されているもののこうした費用がかかるので、結局は最低賃金を下回ることもあると嘆いているそうです。
住友生命「営業職員の経費は自己負担」の不合理菓子代やカレンダー代の負担は労基法違反か
( 東洋経済ONLINE 2022/08/17 8:00 東洋経済 記者:高見 和也 )
生命保険会社の営業職員が必要とするガソリン代や名刺代などは、職員が自己負担させられている。
こうした仕組みに対する職員の不満は高まっており、訴訟に発展するケースも発生している。
「今年の夏も暑中見舞いのハガキを契約者と見込客の全員に送った。会社から年賀状や暑中見舞いを全顧客に送るように、と言われているが、なぜそのハガキ代や送料を営業職員が負担するのか」
住友生命保険の首都圏の営業拠点に勤める職員はこう憤る。
関西圏の大樹生命保険で働く営業職員は、「営業時の駐車場代やガソリン代、お客様との打ち合わせ時の飲食代、名刺代などあらゆるものが自己負担。給与については最低賃金が保障されているが、こうした費用がかかるので、結局は最低賃金を下回ることもある」と嘆く。
住友生命を相手取り、訴訟も
営業活動に絡む経費のほとんどを自己負担とさせられることに対して、営業職員の不満が高まっている。
そうした中、訴訟に発展するケースも出てきた。
住友生命の京都支社に勤務する営業職員Aさん(50代、女性)が、営業活動に関わる費用(営業費用)を給与から控除するのは労働基準法などに違反するとして2019年に会社を訴えたのだ。
「(生命保険)業界全体で脱法行為をしているという認識はないですか?」
「おっしゃっている意味がよくわかりませんが……」
2022年7月に京都地裁で行われた口頭弁論で、証人として出廷した住友生命の営業人事部の担当者は、原告側弁護士の質問に答えを濁した。
Aさんは同社の営業職員として20年以上のキャリアがある。
Aさんは2012年10月から2018年12月までの間、給与から控除された「携帯端末使用料」(月額2950円)や「会社斡旋物品代」(同300円~6万円)など、約210万円の支払いを会社側に求めている。
携帯端末使用料は営業活動で使用するタブレット端末の利用代金(控除は2018年7月まで)のことで、会社斡旋物品代は会社のロゴ入りお菓子代(数百円)やカレンダー(1部100円前後)などだ。
物品代には住友生命のCSR活動の一環である「絵画コンクール」の画用紙代(1枚10円)や、それに参加した子供への記念品代(数十円から数百円)などの費用も含まれる。
さらに、住友生命が制作した中小企業の社長向け情報誌『オーナーズアイ』(1部60円)や広報誌『Sumisei Weekly』(1部5円)など小冊子の費用も「機関控除金」名目で給与から差し引かれている。
100%子会社を通じ、物品を購入
中でも会社斡旋物品は、営業職員が担当している企業などを訪問した際に、見込客や契約者との関係づくりのために活用されている。
物品の多くは、住友生命の100%子会社である「住生物産」から営業職員が購入し、その費用が毎月の給与から控除されている。
今回の訴訟において、原告側は主に2つのことを主張している。
1つ目は、労働基準法で定められた賃金全額払いの原則だ。
同法24条1項では、使用者が労働者の賃金から金員を控除したり、事業主の事業にかかる業務遂行について生じた費用を、労働者に負担させる行為を禁止している。
原告側は不当に控除された賃金の支払いと、被告の不法行為に対する損害賠償を請求している。
2つ目は、民法で定められた不当利得返還請求だ。
民法703条を今回の裁判に当てはめると、「住友生命は原告のAさんから賃金を控除することで同額の利得を得ている。その一方、Aさんは同額の損害を被っている」ということになる。
これに対し、住友生命は以下のように反論している。
まず、営業職員が配る情報誌や広報誌については、「営業職員ごとの営業スタイルによって、そもそも利用するか否か、利用するとしても営業職員によって部数が大幅に異なっている。そのため、被告(住友生命)は営業職員に対して利用を提案するにとどまり、義務付けているわけではない」と主張。
会社斡旋物品については、「子会社の住生物産などが販売しており、被告が販売しているものではないから、被告が原告に費用を負担させているわけではない。被告は本件物品の提供主体ではなく、当該提供主体(住生物産など)に対して、代金の支払いを代行しているに過ぎない」と説明する。
さらに、「営業費用を原告の負担とする合意が、被告と住友生命労働組合との労使協定によって結ばれている」とも主張する。
営業費用を出さないなら、辞めるしかない
原告と被告の主張は平行線をたどっているが、7月の裁判では、会社斡旋物品などを購入せざるを得ない状況に追い込まれることを原告のAさんが説明する一幕もあった。
Aさんの説明によると、営業費用の負担について上司に異議を申し立てたところ、「営業費用を出さないのであれば、辞めるしかないね」と言われた。
また、営業拠点の朝礼で、住生物産の担当者から「斡旋物品の購入数が少ないから、皆さん買ってね!」と勧められたという。
さらに、顧客から小冊子やカレンダーなどを「欲しい」という要望があれば、断ることはできないという。
今回の訴訟は、営業職員チャネルを持つ他の生命保険会社にとっても対岸の火事ではない。
営業職員は正社員として採用されるが、税法上は個人事業主であり、営業費用は営業職員の自己負担となっている。
住友生命以外の会社も同じ仕組みを採用している。
しかも各社とも自社のグループ内に、営業職員に対して各種物品を斡旋する販売会社がある。
住生物産に相当するのが、日本生命グループのニッセイ商事、第一生命グループの日本物産、明治安田生命グループの明治安田商事だ。各社とも営業職員に物品を購入させることで収益を得ている。
そして、当然ながら各グループの連結決算の利益にも貢献している。
ちなみに、現在の大手生保4グループの物品販売会社の社長は、本体生保の執行役員経験者などが務めている。
大手生保4グループの営業用物品販売会社
物品販売会社(所属グループ) 社長名(前職) 売上高 純利益 利益剰余金
住生物産(住友生命) 河野路利(住友生命近畿 32億円 9000万円 9億8000万円円
北陸法人支援部長)
ニッセイ商事(日本生命)松本吉弘(日本生命執行役員)75億円1億5000万円35億8000万円
日本物産(第一生命)守口光徳(第一生命常務執行役員)188億円7000万円88億7000万円
明治安田商事(明治安田生命)水野剛(明治安田生命執行役)56億円8000万円8億8000万円
(注)2022年3月期。各社とも営業職員向け物品斡旋以外の事業も展開
(出所)官報などをもとに編集部作成
<strong>手取りが減って不適切募集に走る職員も
今回の裁判で住友生命のAさんは、「営業職員が負担する物品の値段は、会社が一方的に決めているうえ、値上げも繰り返し行われている。営業費用の負担が増えれば給与の手取り額が減り、それを補おうして不適切な募集行為を行う営業職員もいる。(営業費用の負担によって)お客様に大変なご迷惑をかけてしまっている」と訴えている。
「給与から営業費用や必要経費を除いたら、残ったお金は月額数万円になった」
コロナ禍で対面営業に制約がかかっており、コロナ以前の給与水準を維持できず、上記のように訴える営業職員は少なくない。
Aさんが言うように、自らの処遇に満足していない営業職員が顧客を満足させるサービスを提供することは困難だろう。
生命保険営業の世界ではこれまで、営業職員は営業に関わる費用の負担を当たり前のように会社から強いられてきた。
だが、それは労働基準法に抵触していないのか。また、営業職員の費用負担によって、会社が利益を獲得するビジネスモデルに問題はないのか。法的にも道義的にも問い直す時期に来ている。
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この記事へのコメント
生保レディって元々個人事業主みたいな感じでしょ
労働基準?三か月0だと退職でしょうが?
いつもコメントをありがとうございます。
生保レディーさんたちの考え方や保険業界の考え方が違ってきているのは確かですし、生保レディーさんたちは自分たちが個人事業主であるという自覚や考え方は無いと思いますよ!
なので、このようなことが起きてくるだろうと思っています。
>がくがくダックさん
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>不合理菓子代やカレンダー代の負担は労基法違反・・・・・
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>生保レディって元々個人事業主みたいな感じでしょ
>
>労働基準?三か月0だと退職でしょうが?
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