苦情増に危機感で外貨保険に販売資格 金融界85万人に新試験
生命保険業界が外貨資産で運用する保険・年金商品は円建てに比べて利回りが高く、マイナス金利政策下で数少ない売れ筋の投資商品なのですが、元本割れのリスクを抱え、販売する側の説明や知識の不足で契約者からの苦情が膨らんでいるため、新資格導入は約30年ぶりに「外貨建保険販売資格試験」を創設することで資格試験は販売正常化への第一歩となるのではないかと言われていることが配信されました。
金融界85万人に新試験 外貨保険に販売資格 苦情増に危機感、簡単なら「アリバイ」に
( 日本経済新聞 朝刊 2020/2/28付 )
生命保険業界が「外貨建保険販売資格試験」を創設する。
新資格導入は約30年ぶり。
外貨資産で運用する保険・年金商品は円建てに比べて利回りが高く、マイナス金利政策下で数少ない売れ筋の投資商品だ。
だが、元本割れのリスクを抱え、販売する側の説明や知識の不足で契約者からの苦情が膨らんでいる。
資格試験は販売正常化への第一歩となるか。
元本割れリスク
「清水プロジェクト」。新資格を金融界はこう呼ぶ。生命保険協会の清水博会長(日本生命保険社長)が昨年7月の就任会見で関係者への事前の根回しなしに導入をぶち上げたからだ。
唐突な表明に銀行などは反発したが、清水氏は「苦情が増えているのは明らか」と強硬だった。
日生はメガバンクや地銀の大株主。
「清水さんには参った」(メガ銀首脳)「せめて受験料はまけてほしい」(地銀幹部)と矛を収めざるをえなかった。
生保協は新試験に備えた参考テキストを今春から配布し、10月から全国で試験を始める。
合格するまで何度でも挑戦できるが、2022年春以降は無資格の販売員に外貨保険の扱いを禁止する。
各社はほぼ全社員に取得を義務付ける方向で、受験者数は生保から24万人、銀行、証券、信用金庫など金融機関が44万人、その他の代理店社員17万人を加え、85万人規模に達する見通し。
ちなみに大学センター試験の受験者数は約55万人だ。

誰でも合格できる「アリバイ資格」にしないためにも、新試験が問われるのは内容や難易度だ。
円相場の推移や手数料体系、途中解約した際の返戻金の水準といった基礎知識を確認するのは当然として、類似する投資商品との有利不利など公正な比較も必須だ。
生保協も「目標合格率は事前に定めない」とする。
主に銀行の支店窓口(銀行窓販)で取り扱う外貨保険には終身型や年金型があり、外債で運用する。
足元の10年債でみると、米国債は約1.3%、豪国債も1%弱の利回りがある。
実質ゼロの日本国債で運用する円建てに比べ商品力がある。
表向き外貨保険は「変額商品」と異なり、投資した元本と事前に約束した利回りを保険会社が保証する「定額商品」。
ただし保証はあくまで外貨ベースだ。満期時や死亡時に受け取る年金や保険金を円に戻す際、為替相場が円高(外貨安)に振れていると元本を割り込む恐れがある。
逆に円安(外貨高)が進めば、想定以上の運用益が入る。
金融庁が懸念
為替相場の先行きは実に読みにくい。
おのずと契約時の丁寧かつ周到なリスク説明が大切だが、12年に600件弱だった外貨保険がらみの苦情件数(銀行窓販経由、生保協調べ)は18年に2500件超に膨らんだ。
「定期預金に入ったつもりが外貨保険に加入させられた」「一人暮らしで認知能力が低下した高齢の叔母が20件の外貨保険を契約した」。
法令違反が疑われる苦情や相談さえ国民生活センターには寄せられている。
もう一つ、新資格導入の裏には「顧客本位の業務運営=フィデューシャリー・デューティー(FD)」を要求する金融当局への忖度(そんたく)もちらつく。
金融庁が近年、FDの徹底をめぐり最大の標的としてきたのが投資信託の販売だ。
その投信の売れ行きが鈍ったとたんに、外貨保険の販売が急増しているのはなぜか。
銀行と保険会社が組んで、売りやすい外貨保険を通じた手数料稼ぎに注力してはいないか。
金融庁首脳は「試験を作れと指示したおぼえはないし、資格取得がゴールではない」とくぎを刺す。
低成長が半ば宿命づけられた日本の個人投資家にとって、外貨運用には「分散投資」の効果があり、頭から否定される商品ではない。
ニッポン金融界は新資格を「人生100年時代」の資産づくりに貢献するきっかけにしなければならない。
(編集委員 佐藤大和)

金融界85万人に新試験 外貨保険に販売資格 苦情増に危機感、簡単なら「アリバイ」に
( 日本経済新聞 朝刊 2020/2/28付 )
生命保険業界が「外貨建保険販売資格試験」を創設する。
新資格導入は約30年ぶり。
外貨資産で運用する保険・年金商品は円建てに比べて利回りが高く、マイナス金利政策下で数少ない売れ筋の投資商品だ。
だが、元本割れのリスクを抱え、販売する側の説明や知識の不足で契約者からの苦情が膨らんでいる。
資格試験は販売正常化への第一歩となるか。
元本割れリスク
「清水プロジェクト」。新資格を金融界はこう呼ぶ。生命保険協会の清水博会長(日本生命保険社長)が昨年7月の就任会見で関係者への事前の根回しなしに導入をぶち上げたからだ。
唐突な表明に銀行などは反発したが、清水氏は「苦情が増えているのは明らか」と強硬だった。
日生はメガバンクや地銀の大株主。
「清水さんには参った」(メガ銀首脳)「せめて受験料はまけてほしい」(地銀幹部)と矛を収めざるをえなかった。
生保協は新試験に備えた参考テキストを今春から配布し、10月から全国で試験を始める。
合格するまで何度でも挑戦できるが、2022年春以降は無資格の販売員に外貨保険の扱いを禁止する。
各社はほぼ全社員に取得を義務付ける方向で、受験者数は生保から24万人、銀行、証券、信用金庫など金融機関が44万人、その他の代理店社員17万人を加え、85万人規模に達する見通し。
ちなみに大学センター試験の受験者数は約55万人だ。
誰でも合格できる「アリバイ資格」にしないためにも、新試験が問われるのは内容や難易度だ。
円相場の推移や手数料体系、途中解約した際の返戻金の水準といった基礎知識を確認するのは当然として、類似する投資商品との有利不利など公正な比較も必須だ。
生保協も「目標合格率は事前に定めない」とする。
主に銀行の支店窓口(銀行窓販)で取り扱う外貨保険には終身型や年金型があり、外債で運用する。
足元の10年債でみると、米国債は約1.3%、豪国債も1%弱の利回りがある。
実質ゼロの日本国債で運用する円建てに比べ商品力がある。
表向き外貨保険は「変額商品」と異なり、投資した元本と事前に約束した利回りを保険会社が保証する「定額商品」。
ただし保証はあくまで外貨ベースだ。満期時や死亡時に受け取る年金や保険金を円に戻す際、為替相場が円高(外貨安)に振れていると元本を割り込む恐れがある。
逆に円安(外貨高)が進めば、想定以上の運用益が入る。
金融庁が懸念
為替相場の先行きは実に読みにくい。
おのずと契約時の丁寧かつ周到なリスク説明が大切だが、12年に600件弱だった外貨保険がらみの苦情件数(銀行窓販経由、生保協調べ)は18年に2500件超に膨らんだ。
「定期預金に入ったつもりが外貨保険に加入させられた」「一人暮らしで認知能力が低下した高齢の叔母が20件の外貨保険を契約した」。
法令違反が疑われる苦情や相談さえ国民生活センターには寄せられている。
もう一つ、新資格導入の裏には「顧客本位の業務運営=フィデューシャリー・デューティー(FD)」を要求する金融当局への忖度(そんたく)もちらつく。
金融庁が近年、FDの徹底をめぐり最大の標的としてきたのが投資信託の販売だ。
その投信の売れ行きが鈍ったとたんに、外貨保険の販売が急増しているのはなぜか。
銀行と保険会社が組んで、売りやすい外貨保険を通じた手数料稼ぎに注力してはいないか。
金融庁首脳は「試験を作れと指示したおぼえはないし、資格取得がゴールではない」とくぎを刺す。
低成長が半ば宿命づけられた日本の個人投資家にとって、外貨運用には「分散投資」の効果があり、頭から否定される商品ではない。
ニッポン金融界は新資格を「人生100年時代」の資産づくりに貢献するきっかけにしなければならない。
(編集委員 佐藤大和)
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